データ入力や書類のスキャンといったIT機器を使用した業務を、障がいのある人が働く就労継続支援事業所(いわゆる障がい者施設)にまとめて依頼できます。窓口は NPO法人セルプセンター福岡です。県内の複数の事業所に仕事を割り振り、品質を確かめてから納品し、請求もセルプセンター福岡から行います。発注企業が事業所を一つずつ探して交渉する必要はありません。
この仕組みは、福岡県の「障がい者IT業務等共同受注拡大事業」として、福岡県、セルプセンター福岡、アウトリーチソリューションズ株式会社の3者が連携して運営しています。
それでも、福祉の現場に会社の仕事を任せて、品質と納期は守られるのかと気になる方は多いはずです。セルプセンター福岡の答えは、仕上がりのイメージを作業の前に発注企業と共有し、事業所から届いた成果物を窓口が確かめてから納品する、というものです。
依頼できる業務の種類と向いている作業
依頼できるのは、次の6種類の業務です。紙やデータをお預かりして、決められた形に整えてお返しする仕事が中心です。
| 業務 | お預かりするもの | 納品するもの |
|---|---|---|
| データ入力・集計 | 名簿、名刺、アンケート、申込書などの紙や画像 | 指定の形式に入力・集計したデータ |
| スキャニング・電子化 | 書類、書籍 | PDF などの電子データ(OCR 処理やファイル名の付与も可能) |
| デバッグ・検証 | Web システムやスマートフォンアプリ、確認したい項目 | 動作確認や入力データのチェックの結果 |
| Webリサーチ・収集 | 調べたい内容と条件 | 集めた情報のリスト |
| バックオフィス(事務)代行 | 伝票、書類、発送物 | システムへの登録、書類の整理、封入・発送 |
| SNS・Web運用 | 投稿したい内容や素材 | SNS への投稿代行、SNSの運用代行、簡単なホームページの更新や作成 |
向いているのは、手順を言葉で説明でき、正しくできたかどうかを後から確かめられる作業です。「申込書の氏名・住所・電話番号を、決められた表に入力する」という作業なら、やり方も正解もはっきりしています。反対に、その場の判断に頼る作業や、急ぎの対応が多い作業は、内容をうかがったうえで引き受けられるかを判断します。
件数の多い作業ほど、複数の事業所で分担できる強みが生きます。とはいえ、少量の業務や、少しずつ続く業務でも依頼できます。
相談から納品までの流れ
最初のご連絡で伝えていただきたいのは、業務の内容、おおよその件数、希望の納期の3つです。これをもとに、セルプセンター福岡が事業所の体制と作業量を調整し、見積もりをお出しします。費用と納期は、業務の内容と量によって案件ごとに決まります。
契約の相手は、事業所ではなくセルプセンター福岡です。秘密保持契約もセルプセンター福岡と結びます。作業は県内の複数の事業所で行いますが、発注企業とのやり取り、納品、請求はすべて窓口に一本化されます。事業所ごとに連絡先が増えることはありません。
初めて依頼する場合は、いきなり大量に任せるより、まず少量を試しに発注していただくことをおすすめしています。仕上がりと進め方を実際に確かめ、入力ルールや手順を調整してから量を増やすほうが、発注企業にとっても事業所にとっても無理がありません。
品質と情報はどのように守られるか
品質は、作業の前、作業の間、納品の前の3つの場面で守ります。流れ図で「品質のポイント」と書いた3か所が、それぞれに当たります。
作業の前には、発注企業とセルプセンター福岡で、仕上がりのイメージを共有します。データ入力であれば、入力ルールや表記のそろえ方、確認の進め方などを事前に確認し合います。そのうえで発注企業とセルプセンター福岡で案件ごとに作業マニュアルとよくある質問の一覧をつくり、必要に応じて事業所の職員や利用者に研修を行います。
作業の間は、セルプセンター福岡が事業所ごとの進み具合と品質を管理します。作業中に出てきた疑問は、まずよくある質問の一覧で解決します。それでも判断がつかないものは窓口が受け取り、必要なときは発注企業に確認します。判断を事業所任せにしないので、事業所によって仕上がりが変わることを防げます。
納品の前には、事業所から届いた成果物を、セルプセンター福岡が事前に取り決めた内容に照らして確認します。確認を何段階で行うか、どのような方法で行うかは、業務の内容に合わせて決めます。
お預かりする情報については、秘密保持契約を結んだうえで、作業に使う端末を限定します。個人情報を含む書類などは、必要に応じて情報を伏せた状態で作業する方法も相談できます。作業する場所やセキュリティの条件にご要望がある場合は、それに沿って対応できるかを判断します。
これまでの実績(書籍の電子化とデータチェック)
大きな案件では、二つの実績があります。
一つめは、国立国会図書館の蔵書の電子化です。全国13の作業拠点のうち、大野城市、大牟田市、北九州市、桂川町の4拠点をセルプセンター福岡が運営しています。各拠点には周辺の事業所も作業に加わり、送られてきた書籍を電子データにして納めています。この仕事は複数年にわたって続けて受託しており、2026年で5年目になります。社内に保管している紙の書類や冊子の電子化も、スキャンとデータ化という点では同じ種類の作業です。
二つめは、クラウド記帳サービスを提供する企業から受託している、データのチェック作業です。利用者がアップロードした領収書などの証憑を AI-OCR で読み取り、その結果が正しいかを人の目で確かめています。扱うデータは1日8万件にのぼり、多い日には最大400人が作業にあたります。AI で読み取る仕組みを入れた後も、結果を確かめる工程は残ります。この案件では、その工程を大量に、毎日続けて引き受けています。
同じような作業を抱えている場合は、お問い合わせから業務の内容と件数をお知らせください。
業務委託は障害者雇用率に算定されるのか
算定されません。就労継続支援事業所への発注は、障がいのある人を雇用することではなく、業務を委託することだからです。法定雇用率を満たす手段にはなりません。
雇用の代わりにはならない一方で、業務委託には別の意味があります。
一つは、自社の業務を見直すきっかけになることです。業務を外に出すには、どこからどこまでを任せるのかを切り出し、手順と合格の基準を言葉にする必要があります。この作業を通して、社内で人に頼っていた仕事が手順として整理されます。将来、障がいのある人を直接雇用することを考えるときにも、どの業務をどう任せられるかを検討する材料になります。
もう一つは、発注がそのまま働く人の収入になることです。発注いただいた仕事の対価は、作業した事業所を通じて、障がいのある人の工賃として支払われます。本業のなかで生まれる作業を発注することは、寄付とは違い、事業を続けるかぎり続けられる社会貢献です。
依頼する前に知っておきたいこと
- 職業紹介や採用のあっせんは行いません。 障がいのある人の雇用を検討する場合は、発注企業が直接採用することになります。
- 費用と納期は案件ごとに決まります。 決まった料金表はありません。業務の内容と量をうかがってから見積もります。
問い合わせのときに伝えてほしいこと
問い合わせの際は、次の3つをお知らせいただくと、見積もりまでの話が早く進みます。
- 業務の内容(例:紙の申込書の内容を Excel に入力したい)
- おおよその件数と、続く期間(例:月に500件ほど、半年続く見込み)
- 希望の納期
記入済みの書類の写しなど、作業の見本をお見せいただけると、見積もりの精度が上がります。まずは少量の試しの発注から、お問い合わせフォームでご相談ください。